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読書の喜び(3)

  • ※社員へ向けた社内朝礼スピーチより抜粋

2月の始め頃だったでしょうか。ニュースサイトにこんな記事が載っていました。

「私は本を読んでいたら、いつかは頭が良くなると信じていました。以来愚直に30年読み続けてきましたが一向にその兆しはありません。きっと本を読む量も質も、どちらも足りなかったのだろうと考えていた」

この記事を読んで奇異に感じました。30年間、本当に頭がよくなるという成果を求めて本が読めるのだろうかと。当然ですが、本を読んでも頭は良くなりません。賢くはなるでしょうが。

本当に本好きの人は、何か成果を得るためという気持ちで読んではいないと思います。面白いから読んでいる、ただそれだけでしょう。ここでの面白いというのは、可笑しさや滑稽さではなく、興味深いとか心惹かれるとかそういう意味です。

私は、人生を生きるということは、謎だらけで解のない問題を熟しながら、もがき苦しむことと言ってもよいと考えています。そんな中での唯一の光は、私にとっては読書にあるような気がしています。とは言っても、読書は縋るようなものではなく、例えば登山のピッケルや杖のような、あるいは、空気のような存在です。いつも何冊かがそばに有り、特別な存在ではないのですが、無いととても不安になる、そんなものです。さらに、見識を広げる、思考を深める、繊細な感情を持つといった部分にも役立ってきたような気がします。小説のみならず思想や哲学書で涙が出るくらい感動に浸ることもできます。

私は読書から、文字に表せないくらいの恩恵を受けています。本好きというより、活字中毒といったほうが当たっているかもしれません。

私にとっての読書とは、一言でいうと、「自分の人生を味わい尽くす」大事なツールであると言えるかもしれません。

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