2025.03.03
社長室
吹け、新しい地熱の風
※この記事は、地熱開発コンサル会社のエディット代表の藤野が、朝礼で社員へ向けて発信するコラムです。
皆さん、おはようございます。三寒四温あるいは光風動春という言葉がぴったりの季節ですね。先週末は暖かく四月の陽気でしたが、あいにくの雨でした。それでも、木々の新芽や花の蕾はふくらみを増しています。そして、沈丁花とその香りを忘れてはいけませんね。地味な花ですが、この季節のためにあるといっても良いでしょう。
現在、日本国内の地熱発電事業は低迷しています。なぜなのでしょうか。地熱利用が発電事業として、電力会社、鉱山資源会社、そしてファンド会社などによって、商品としての電気を得ることのみを目的に開発が進められているためではないかと考えています。
専門書も地熱発電事業に関するものが大半で、大学のカリキュラムも発電事業が大部分を占めていると思います。しかし、このままで良いのでしょうか。テキストは相変わらず大きく方向を変えることはなく、今後もこの延長上をゆっくりと進化するのでしょう。それは学問としての価値としては評価されると思いますが、最早ドラスティックに地熱利用事業の発展に結びつくとは思えません。学生もまた、地熱の飛躍的な利用発展、あるいは地域の活性化や再生に目を向けているものは、残念ながらほとんどいないのではないでしょうか。
しかし、地熱開発は地域の活性化、再生、すなわち、ソーシャルデザインと密接に結びつかなければ生きる道はないのではないでしょうか。地熱発電を含めて地熱エネルギーの利用開発は、もっと地域の生活に密着した、農業利用であったり、温泉として利用したりする方が、我々の生活にとってはるかに価値があるように思えてなりません。
もちろん、地熱エネルギーによって発生する電気は、他の自然エネルギー発電の電気よりも良質で、安定しています。しかも、資源量的には国産エネルギーとして大規模なエネルギーを生産できると思います。しかしながら、人々の生活から距離を置いたところにしかないのです。何とか、地熱エネルギーをもっと地域の生活に密着したものとして開発利用できないものかと思っています。例えば、地熱熱水利用事業の専門書があっても良いし、若者が地熱利用の農業に飛び込んで、ビジネスモデルを作り上げるといったことがなければ、今後の地熱発電は地に着いたものとして存続していかないのではないかと思っています。地熱開発は、地域や社会の課題を解決する手段でなければなりません。
そういう意味で、現在の発電一辺倒の地熱開発事業に対し、軽い憤りすら感じます。また、まだ答えは出ていませんが、何とか、多角的な地熱利用の道をつけられないかと強く思っています。そして、それは私がやるのではなく、エディットのスタッフやこれからの地熱に従事する若者に期待したいのです。
以上は、九重の発電所の現場で、民宿のベッドで夢心地で考えた内容でした。